Kenji Yanobe Supporters club

現代美術家ヤノベケンジの活動情報です。(運営:KYSC)

ヤノベケンジ《サン・シスター》

ヤノベケンジ《サン・シスター》
2015年  FRP、ステンレススティール、鉄 他

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写真提供:KENJI YANOBE Archive Project

過去・現在・未来を見つめ、希望の象徴としての「輝く太陽」を手に持ち大地に立つ少女像。
「Sun Sister」は阪神・淡路大震災20年のモニュメントとして建立されました。東日本大震災の復興を祈念して建立された子ども像「Sun Child」(2012年 茨木市)の姉のような存在であり、世界中のすべての災害からの復興・再生を見守っています。


協力 京都造形芸術大学 ウルトラファクトリー

 

希望でつながるモニュメント《サン・シスター》と《サン・チャイルド》

《サン・チャイルド》の誕生と旅路


2011年、東日本大震災後、ヤノベケンジは、それ以前から交流のあった福島県立美術館福島大学の関係者と早々に連絡をとり、4月には福島に入り、福島県立美術館での再オープンに合わせて特別展示を行いました。また、夏休みには放射線によって自由に外出できない子どもたちのため、ワークショップを開催しています。


同時に、東日本大震災被災した人々が立ち上がるきっかけとなるような、希望のモニュメントを構想します。それが《サン・チャイルド》でした。《サン・チャイルド》は、右手に希望を象徴する太陽を持ち、左手に放射能防護服のヘルメットを抱え、顔に傷と絆創膏を貼りながらも、放射能の心配のない世界を取り戻した未来の姿を示した全長6.2mの巨大な子ども像でした。

 

《サン・チャイルド》は2011年10月、大阪の万博記念公園で公開されます。その後、3体が作られ、東京の岡本太郎記念館第五福竜丸展示館、モスクワ、イスラエルなど、国内外で巡回展示されました。さらに、2012年3月にはヤノベの故郷の茨木市にある阪急南茨木駅前のロータリーに常設設置されました。茨木市の《サン・チャイルド》は被災した東北地方を向いて復興・再生を見守り続けています。

 

そして、2012年8月には、福島現代美術ビエンナーレに招聘され、ヤノベは資金難の事務局の負担を軽くするため、運搬費を支援者から提供して頂いて、《サン・チャイルド》を会場の一つであった福島空港で展示しました。その際、ヤノベは約180人の支援者一人一人に自筆のドローイングを描いて郵送しています。


2013年には、東北大学教授であり、被災にもあった建築史家の五十嵐太郎氏が芸術監督となって、「揺れる大地―われわれはどこに立っているのか?場所、記憶、そして復活」という震災以降の世界をテーマに開催された国際芸術祭あいちトリエナーレ2013において《サン・チャイルド》は展示されました。

 

1995年とヤノベの旅路


あいちトリエンナーレ2013の頃に、兵庫県立美術館の蓑豊館長より、ミュージアム・ロードに設置するパブリック・モニュメントの制作依頼を受け、阪神・淡路大震災20年に合わせて構想されたのが《サン・シスター》でした。


ヤノベにとっても、1995年は特別な年で、関西出身でずっと関西に住んでいながら、ちょうどベルリンに拠点を置いていた時期であり、阪神・淡路大震災被災することはありませんでした。しかし、現実に巨大災害が起きたことで、自分が漫画やアニメに影響受けて育み、創作の基盤となっていた幻想が崩れ、社会や現実的な問題と向き合って作品を作る方向に転換します。

 

そして2年後の1997年、現実を自分の体で体験するためにチェルノブイリに探訪することになります。しかし、自作の放射能防護服を着てチェルノブイリを探訪した際、居住禁止区域に住んでいないはず人々が帰還している厳しい現実に直面します。取り残された老人や帰還せざるを得なくなった3歳の子どもとの交流により、未だ自分の作品に残る幻想や行動の浅はかさを知る機会となりました。それ以降、自分の行動に対する深い反省と経験に基づき、社会に警鐘を与える作品を作り続けることになります。

 

しかし、警鐘を鳴らしていると思っていた自負は、東日本大震災で見事に打ち砕かれ、チェルノブイリの深刻な事態を日本が直面することになります。その中で、未来を警鐘する作品から、希望を与える作品に転換する必要性を感じ、それ以降、《サン・チャイルド》をはじめとして、苦難の中で人々がポジティブに生きるための強い希望のメッセージを持つ作品を作り続けています。

 

《サン・シスター》の誕生と旅路


《サン・シスター》は様々な困難と葛藤の時間を過ごしてきた阪神淡路地区の経験から、東日本大震災から復興しようとしている人々に、苦しみを共有し慰めや勇気を与えられることがあるのではないかということで、《サン・チャイルド》よりも経験を積み、少し大きくなった少女像として構想されました。


《サン・シスター》は、プロトタイプとして2014年、京都文化博物館別館で展示されました。座りながら目を閉じて深く瞑想し、太陽の光とともに目覚めて立ち上がる《サン・シスター》は人々に安心を与え、希望の訪れを告げるシンボルとして作られました。その後、武蔵野美術大学で行われた展覧会「オオハラコンテンポラリー」に出展され、地元の中学生とのワークショップ「みらいのたいよう計画」も行われました。さらに、福島現代美術ビエンナーレ2014においても、会津地方の喜多方の石蔵で展示され、東京国立博物館の展示デザイナー・木下史青氏による照明の演出が行われ評判となりました。


兵庫県立美術館前に設置される《サン・シスター》は、それらの旅路が終わり、瞑想から目覚めて立ち上がっています。そして、南を向いて海から登る太陽を手に持ち、様々な苦難の日々を過ごしてきた人々の過去と現在、そして未来を見守り続ける存在となるよう、希望のメッセージが込められています。スカートはときに人々の雨宿りになり、日差しの強い日には日傘の役割を果たすでしょう。


そして、《サン・シスター》と《サン・チャイルド》という二体が一つとなって、世界中のすべての災害からの復興・再生を見守り、応援し続けることでしょう。

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ミュージアムロード・オブジェ「Sun Sister」の完成お披露目式の開催

 

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 兵庫県立美術館から神戸市立王子動物園までを結ぶ「ミュージアムロード」に、沿道の賑わい創出につながるオブジェ第2弾として、未来の希望を象徴するオブジェ「Sun Sister」が完成します。これを機に、制作者のヤノベケンジ氏を招き、地元の子どもたちの参加のもと、下記のとおりお披露目式を開催します。

 

1 オブジェの概要 
(1) 作 品
「Sun Sister」(サン・シスター)
(高さ約6m、外装FRP、ステンレス、鉄骨構造)

《制作者の作品コメント》
過去・現在・未来を見つめ、希望の象徴としての「輝く太陽」を手に持ち、大地に立つ少女像。

(2) 制作者
ヤノベケンジ
・49歳、大阪府在住 京都造形芸術大学教授・現代美術作家。
・2009年 「水都大阪2009」にて、火や水を噴く龍が乗るアート船「ラッキードラゴン」、巨大ロボット「ジャイアント・トらやん」等を発表し、大阪文化賞受賞。 
・2012年 震災復興を掲げるモニュメント「サン・チャイルド」を大阪・南茨木駅前に設置。
 
(3) 設置場所 
  兵庫県立美術館南側敷地 大階段下(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1) 

2 お披露目式
 (1) 日 時
    平成27年6月28日(日)11:30~12:00(受付11:00~) 
 (2) 場 所
   兵庫県立美術館南側敷地 大階段下 オブジェ設置場所付近 
 (3) 次 第
   ・主催者あいさつ
   ・来賓あいさつ
   ・制作者による作品説明
   ・合 唱(神戸市立なぎ小学校合唱部)
   ・テープカット
   ・記念撮影

 

 

ヤノベ ケンジ
京都造形芸術大学美術工芸学科教授
兼ウルトラファクトリーディレクター
現代美術作家
1965年 大阪府生まれ、現在高槻市在住

 

《主な活動》
1990 年~ 現代社会における「サヴァイヴァル」をテーマに実機能をもつ機械彫刻作品を数多く制作。
1997 年 チェルノブイリを探訪する「アトムスーツ・プロジェクト」を敢行。
ユーモラスな形態に社会性のあるメッセージを込めた作品群が国内外で高い評価を得る。
2009 年 大阪を舞台にした「水都大阪2009」にて、火や水を噴く龍の乗るアート船「ラッキードラゴン」、巨大ロボット「ジャイアント・トらやん」などを発表。大阪文化賞受賞。
2011年 東日本大震災後、復興・再生の願いを込めた希望のモニュメント「サン・チャイルド」を国内外で巡回展示。
2012 年 「サン・チャイルド」を大阪・南茨木駅前に設置。
2013 年  「瀬戸内国際芸術祭2013」、「あいちトリエンナーレ2013」に出展。
2014 年 「2014京都国際映画祭」に参加。
ビートたけし吉本新喜劇など他分野とのコラボレーションや機械彫刻、巨大彫刻、演劇、絵本など、既存のアートの枠組みを超えたユニークな作品の制作・発表を精力的に行っている。       
   

琳派400年記念祭「PANTHEON-神々の饗宴-」記者会見掲載記事(追加)6/4~

www.cinra.net

 

yanobe.hatenablog.com

 

ヤノベケンジ ULTRA

ヤノベケンジ ULTRA

 

 

琳派400年記念祭「PANTHEON-神々の饗宴-」記者会見掲載記事

www.jiji.com

karasuma.keizai.biz

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“雷神”の巨大彫像登場 京都府立植物園、琳派400年催し : 京都新聞

 

headlines.yahoo.co.jp

 

news.biglobe.ne.jp

 

www.sankei.com

ヤノベケンジ ULTRA

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「PANTHEON(パンテオン)=風神雷神の覚書」ヤノベケンジ

琳派とは何か?狩野派のように、身分、世襲、派閥、工房などによる技術継承が行われたわけではなく、京都を中心に非連続に受け継がれてきた感性の系譜である。その特徴を、大きく言えば、京都の王朝文化の洗練された装飾的な芸術が江戸時代の町人文化にも受け継がれ花開いたものといえる。

ただし、琳派400年と言ったときに、「光悦が家康から鷹峰の土地を拝領した元和元年(一六一五年)を琳派誕生の起点とし二〇一五年を琳派四〇〇年記念の祝祭の年としたい」と述べられているように、琳派が発足した正式な年代というのはない。

琳派を代表する作家は、概ね、三期に分けられる。本阿弥光悦俵屋宗達が活躍した桃山時代~江戸時代初期、尾形光琳尾形乾山が活躍した江戸中期、酒井抱一、鈴木其一が活躍した江戸時代後期である。それぞれ約100年の隔たりがある。四期があるとすれば、明治から昭和初期に琳派に影響を受け絵画、工芸、デザインなど手がけた神坂雪佳などが挙げられる。

琳派400年と言うのは、つまり、四期目から約100年後にあたり、再び、琳派の感性が花開く時期と言っていいのかもしれない。

江戸時代には、日本の政権が京都から江戸に移り、明治時代には天皇が東京に行幸されることで、京都は王朝文化の中心を喪失している状態であるといえる。しかしながら、今日においても京都は世界を代表する観光地として、多くの人々を惹きつけて止まない。

京都三大祭である、葵祭祇園祭時代祭に表されるように、由来の異なる祭りが年中行われ、四季を感じさせてくれる。その雅さや洗練は今日に至るまで継承されているといえる。

琳派が受け継いできたものを一言で表すと京都や日本が培ってきた「自然や季節の変化に対する鋭敏で繊細な感性」と言っていいだろう。

もう少し突っ込んで表現の共通点を言うと、目に見えないものを表すことといえるかもしれない。例えば、酒井抱一の『夏秋草図屏風』は夏の夕立によって草花がしなっている場面と、秋の野分の強風で草花が舞っている場面を見事に描写している。それによって、季節と雨と風という、そこに存在しているものの目に目えないものがしっかり描かれているのだ。

琳派の代表作は、言うまでもなく俵屋宗達本阿弥光悦酒井抱一などが描いた『風神雷神図』である。『風神雷神図』を描くことは、琳派を継承するもののイニシエーションのようなものかもしれない。

 

その元祖である俵屋宗達が描いた『風神雷神図』のモチーフは、三十三間堂風神雷神像や、『北野天神縁起絵巻』の雷神像など諸説がある。しかし、二対になっていることや、三十三間堂の著名さから言っても、三十三間堂風神雷神像を見てないということはないだろう。三十三間堂は、平安時代に末期に創建され、焼失後、鎌倉時代に再建されている。再建時には、鎌倉時代の代表的な仏師集団である慶派、院派、円派が参加している。中心にある千手観音菩薩坐像は、運慶の嫡男である湛慶が82歳で制作した名作である。

風神雷神像も鎌倉時代を代表する傑作であり、三十三間堂は鎌倉時代に花開いた日本最高峰の彫刻芸術が凝縮した空間だといえるのだ。

俵屋宗達三十三間堂風神雷神像をモチーフとしていたとしたら、風神と雷神の間には風や雨、雷だけではなく、二十八部衆に加え、千体もの千手観音菩薩立像や巨大な千手観音菩薩坐像が隠れていると言っても過言ではない。

私が彫刻家として琳派をモチーフにするにあたり、その遺伝子のもっとも中心にある『風神雷神図』が最初に彫刻から絵画へ転換されたことに遡り、400年の時を経て絵画から彫刻へと解凍する道を選びたい。

そこで400年間凍結していた絵画は、彫刻となって動き出し、隠れていた神々も復活するインスタレーション、「PANTHEON」となって花開く。

京都府立植物園は、日本で最初の公立植物園であり、明治時代までは雷の神様、賀茂別雷大神を御祭神とする上賀茂神社の境外末社である半木神社とその鎮守の森(半木の森)を中心とした田園地帯になっていた。現在は半木神社を中心に、賀茂川から引かれた水によって生育している日本の花と世界の花が入りまじり、世界中の花が新しい神様として人々に憩いと安らぎを与えている。まさに現代のパンテオン(万神殿)といえる。

琳派400年を祝うのにこれ以上最適な場所はなく、多くの蓮や睡蓮が植えられた京都府立植物園は、蓮華の上に座る千手観音も想起させるだろう。そして、琳派の代表的なモチーフであるとともに、日本と世界の神話や絵画のモチーフにもなってきた花をイメージした新しい神像としてローマ神話の花の神の名前でもある彫刻《フローラ》と、それを守り育てる新しい風神雷神を表現したい。フローラは、ボッティチェリの《プリマヴェーラ》をはじめ、多くの画家に描かれている。また、その由来から植物相を表す語原となっている。

さらに、この貴重な機会を得て、現代のジャポニスムともいえる「Kawaii」文化を牽引する色彩のアーティスト増田セバスチャンと、光のアーティスト髙橋匡太とコラボレーションすることで、制作方法についても共同制作の先駆者である琳派を見習いたい。

PANTHEON=風神雷神は、琳派の遺伝子を受け継ぎ、西洋文化に大きな影響を与え、さらに西洋と東洋の文化が混じり合いながら、融和している今日の京都に相応しいモニュメントになるだろう。

琳派400年記念祭「PANTHEON-神々の饗宴-」@京都府立植物園 プロジェクト概要発表

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琳派400年記念祭
ヤノベケンジ×増田セバスチャン×髙橋匡太

「PANTHEON-神々の饗宴-」@京都府立植物園 観覧温室前「鏡 池」 

夏から秋にかけて植物がひときわ美しい季節に、
400年の時空を超えて、琳派(RINPA)の神々である「風神」「雷神」、そして
「フローラ(花の女神)」が京都府立植物園の睡蓮の花咲く「鏡池」に降臨します。

 

琳派の美学」をそれぞれの方法で継承し、世界的に注目される3人のアーティスト、ヤノベケンジ(形)、増田セバスチャン(色)、高橋匡太(光)が集い、本プロジェクトのヴィジョンを語ります!

 

プロジェクト概要発表記者会見

●日 時:5月26日(火) 13:30~14:30(受付:13時~)
         ※10分前迄に植物園会館1F展示室まで御参集ください。

 

●会 場:京都府立植物園京都市左京区下鴨半木町)TEL 075-701-0141
      植物園会館2F多目的室

 

●内 容: 琳派400年とモダンアートプロジェクトについて(事務局)
       アーティストからのメッセージ(ヤノベ・増田・高橋)   
       質疑応答
        フォトセッション(「雷神」をバックに)

 

●展覧日程:序  章「雷神-黒い太陽」  5月26日(火)記者会見~
      第1章「フローラ降臨」   7月25日(土)~
      第2章「風神の塔」     8月中旬~
      最終章「New Generation Plant」(増田セバスチャン)9月中旬~
      髙橋匡太によるライトアップ饗宴 ※仲秋9月27日(日)~10月11日(日) 夕刻

 

琳派400年を記念する本展では、京都府立植物園の温室前「鏡池」に、神々をモチーフに した3体の巨大彫刻作品(雷神・風神・花の女神フローラ)が次々と降り立ちます。
その神話的インスタレーションは、ヤノベケンジ(現代美術作家)、増田セバスチャン(アー トディレクター)、髙橋匡太(ライトアップ・アーティスト)という豪華な面々によるコラボレー ションによって壮大な物語として演出されます。
また本展は、『風神雷神図』を象徴として受け継がれてきた琳派の起源に遡ります。琳派 の創始者の一人、俵屋宗達の『風神雷神図』は、慶派、円派、院派が活躍した日本仏像史 における黄金期に作られた三十三間堂の風神・雷神像からも影響を受けたとされています。
そして、400年の時を超えて、2次元の絵画(屏風)から、ヤノベ(形)、増田(色)、髙橋(光) らの手によって、新たな風神・雷神や神々が再び 3 次元の世界に降臨するのです。それ は園内に創建 1300年以上の上賀茂神社末社があるパンテオンに相応しく、琳派の美学 を継承すると同時に、流派や時空を超えたクリエイターと神々の饗宴となるでしょう。

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