Kenji Yanobe Supporters club

現代美術家ヤノベケンジの活動情報です。(運営:KYSC)

矢延平六とは誰か?—8/7ヤノベケンジ×矢延平六 リサーチプロジェクト「シネマタイズ展関連イベント」@高松市美術館

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www.city.takamatsu.kagawa.jp

8月7日(日)15:30~16:30まで、ヤノベケンジ展「シネマタイズ」の関連イベントであるヤノベケンジ×矢延平六 リサーチプロジェクトが開催されます。

ヤノベケンジ展「シネマタイズ」では、1部と2部とに分かれ、現実と虚構の「映画化」がテーマになっています。1部では現実、2部では虚構とパートに分かれて展示され、1部ではヤノベケンジの今までの作品が再編されています。


そして、2部では虚構がテーマとなり、映画セットが組まれています。長いトンネルを超えると、巨大プールに水が張られ、水を汲み取り吐き出す《風神の塔》やプラズマ(雷)発生装置である《ウルトラー黒い太陽》など、ヤノベ作品と混然一体となった映画セットは前代未聞の試みとして注目を浴びています。会期中には、林海象監督、永瀬正敏主演によるSF映画『BOLT』が実際に撮影されることも話題になっています。

 

その中で関連企画であるリサーチプロジェクトは、何の説明もなく「矢延平六」という人物名が出てきており、謎に思った方もいるかもしれません。矢延平六とは、ヤノベケンジ父親?親戚?少なくとも血縁関係であると思うでしょう。

 

しかし、ここには恐るべき「アナザーストーリー」が含まれているのです。高松のある香川は皆さんもご存知のように、降水量が少なく、大きな川がないため、水田開発には苦労してきました。だから、香川各地にため池が作られており、もっとも巨大なため池である満濃池を作った空海をはじめ、ため池を作った土木技術者は、香川県の恩人として尊敬されてきているのです。

 

その功績者は主に以下の5人であり、香川県のHPでも紹介されています。

空海弘法大師) 
西嶋八兵衛(にしじまはちべえ)
平田与一左衛門(ひらたよいちざえもん)
矢延平六(やのべへいろく)
太田伊左衛門(おおたいざえもん)典徳

ため池について - 改修と築造|かがわの農業農村整備

 

ここ記載されている土木技術者、矢延平六についてHPから抜粋します。

松平頼重は、赴任早々400箇所を越えるため池の築造を命じ、これに矢延平六が深く関わったといわれている。~中略~
平六は「新池」築造の恩人として池の宮に祭られ「ひょうげ祭」の主人公となっているほか、県中部の丸亀市飯山町でも貯水量が100万トンを超える「仁池」築造の恩人として、池のほとりに建立された飛渡神社に祭神として祭られている。平六は武士といいながら、現場の第一線で農民達と汗を流すタイプの技術者で、農民達に広く慕われていたことが伺える。~中略~

新池が完成して豊かな稔りを迎えたとき、地元農民は、歓喜し平六を尊敬すること領主のごとくと伝えられえているが一方で、この巨大なため池はその位置から下流の高松城を水攻めにせんがためとの戯言が広まり、平六は裸馬に乗せられ隣の阿波国へ追放された。~中略~

彼が築造に関係したと考えられる池は、高松市香川町の新池、丸亀市飯山町の仁池、楠見池、牟礼町の王墓池をはじめとして名のある池だけでも100余に上ったというが、頼重公の時代に406の池が築かれ、そのうちの多くは平六が関係したとも言われることからその業績は偉大である。

 

ため池について - 矢延平六|かがわの農業農村整備

 

松平 頼重(まつだいら よりしげ)とは、高松藩の初代藩主です。
(江戸時代前期の大名。常陸下館藩主、のち讃岐高松藩初代藩主。水戸藩初代藩主徳川頼房の長子で、"水戸黄門"こと2代藩主徳川光圀の同母兄。)

松平頼重 - Wikipedia

 

つまり、江戸時代初期のため池のほとんどに矢延平六が関わっているのです。そして、毎年、新池では秋に「ひょうげ祭り」(ひょうきん)が開催され、飛渡神社の祭神となった平六を祀っているのです。周辺地域の人々は、平六が築造した新池によって、田んぼを耕せることと、無実の罪をきせられた平六へ感謝していることがばれないように、ひょうきんな格好と化粧をして練り歩く伝統になっています。そして、最後には御神輿を担いで、新池に飛び込むことで、クライマックスを迎えます。「ひょうげ祭り」は、NHK新日本風土記「讃岐」の回でも紹介されています。

新日本風土記

 

すでに皆さんももしや?と思ったかもしれませんが、ヤノベケンジの本名は矢延憲司として知られています。矢延姓というのはそれほど多くなく、岡山あたりが出身地だと言われています。一説には矢延平六の先祖も岡山あたりから来たと言われており(頼重に従って常陸の国から来訪したとも言われる)、ヤノベケンジの先祖と深い関わりがある可能性があるのです。

 

今年の2月、ヤノベケンジは、矢延平六が築造した新池に行き、それを確かめに行きました。そこで見たのは驚くべき風景で、新池は現在、日本最大のフロート型の太陽光発電ができるため池へと変貌しつつあったのです。それは、高松が日照量が多く、巨大なため池があるという条件が揃っているからでもあります。その条件を満たしたのは、他でもなく矢延平六だったのです。


自身が今回展覧会で、美術館にため池を作り、新しい発電をテーマにしていることが、高松の地で矢延平六をきっかけにつながり、運命の出会いを感じたのでした。

 

このリサーチプロジェクトには、まさにタイムトリップし、現実と虚構が複雑に絡み合うストーリーがあるといってよいでしょう。そして今回のもう一人の講師には、長年、矢延平六を研究している地元の彫刻家、南正邦さんを迎え、さらに深い謎解きが行われる予定です。是非ご期待ください。