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Kenji Yanobe Supporters club

現代美術家ヤノベケンジの活動情報です。(運営:KYSC)

ヤノベケンジ展「CINEMATIZE シネマタイズ」概説

現実と虚構を「シネマタイズ」するアート

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 映画『BOLT』(パイロット版)撮影風景 MASK(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)にて

ヤノベケンジ展「CINEMATIZE(シネマタイズ)」
2016年7月16日(土)~ 9月4日(日)
高松市美術館

http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/museum/takamatsu/contact/pdf/press/01.pdf

近年のヤノベ作品と展示

ヤノベケンジ高松市美術館で、久しぶりに個展形式で展覧会を行います。ヤノベケンジの近年の作品展示は、ほとんどが美術館ではない場所で行われてきました。

 

昨年、琳派400年記念祭の一環として開催された、京都府立植物園の展覧会「PANTHEON—神々の饗宴—」では、植物園内の温室前にある人工池に増田セバスチャンとの共作である《フローラ》、両脇に《風神の塔》、《雷神—黒い太陽》という、巨大な三体の立体作品が、夏から秋にかけて3ヶ月間展示されました。

 

また、大阪の水辺で開催された「水都大阪2015」では、「水都大阪2009」でお目見えした、船舶に乗った龍の作品《ラッキードラゴン》が、水路を廻りながら水を噴き上げ大いに観客を沸かせました。

 

さらに、兵庫県立美術館の南側、海岸沿いに阪神・淡路大震災20年のモニュメントとして、《サン・シスター》が常設展示されました。全身ステンレスで覆われた全長6メートルの巨大少女像が、南を向いて光を反射させながら、過去に思いをはせ、未来を見続けています。《サン・シスター》は、東日本大震災復興の祈りを込めた希望のモニュメント、《サン・チャイルド》のお姉さん的な位置づけです。《サン・チャイルド》は、高松市美術館でも展示され、大阪南茨木市の常設展示のほか、東京、福島、愛知、岡山、イスラエル、ロシアなど、世界中を巡回し続けています。

 

本年2016年は、「瀬戸内国際芸術祭2016」が開催されており、前回2013年に小豆島で展示したミラーボール作品《スター・アンガー》やビートたけしさんとの共作《アンガー・フロム・ザ・ボトム》、さらに、小豆島―神戸、高松間を結ぶ連絡船「ジャンボフェリー」甲板には、《ジャンボ・トらやん》が継続して展示されています。

 

特に《アンガー・フロム・ザ・ボトム》は、古井戸の化け物になった神様のオブジェでしたが、地元神社の神主や巫女の祭礼により、新たに水神として祀られるようになりました。さらに、地域有志の浄財によって、建築集団ドットアーキテクツ設計の伸縮型の神明造の社が新たに建てられ、美井戸(ビート)神社として信仰の対象になっています。

 

ヤノベは、このように地域の歴史や人々と作品をシンクロさせながら、独自の世界観を挿入することを行ってきました。展示場所は屋外が多いため、作品は巨大化し、堅牢になっていっています。つまり内容面も物質面も強度が増しているといえます。

 

ヤノベケンジの展示手法

このようなヤノベケンジの展示手法については、これまであまり語られてきませんでした。しかし、今回、高松市美術館で開催される個展「CINEMATAIZE シネマタイズ」では、ヤノベケンジの展示手法、空間演出手法が初めて正面からテーマになって展覧会であるといえます。

 

「CINEMATAIZE」とは、「映画化する」を意味する動詞です。ヤノベケンジは今まで、現実や日常に、巨大な作品を持ち込むことで、映画のような虚構(フィクション)や物語のワンシーンのように劇的に変容させる、ということを行ってきました。展覧会では、そのことを「CINEMATAIZE シネマタイズ」と捉え、ヤノベケンジの今までの作品制作の歴史が再編されます。

 

例えば、《ラッキードラゴン》のように、船舶に乗った龍が、火焔や水を噴いたりするのをたまたま見かければ、どのようなアトラクションやイベントが始まったのかと思うでしょう。特に個性の強い造形物なので、背景に特定の物語があったり、映画撮影が行われているのかと思ったりする人々もいると思います。

 

その時、現実が虚構的で演出的な空間に変容します。予め用意されたシナリオによって、現実が虚構に変わるのではなく、ヤノベケンジの立体作品によって変容していくのです。それはある種の「ハプニング」と言え、偶然の出会いによって観客それぞれの心に起こる物語といえるでしょう。

 

しかし、それらのハプニングや発生した物語が、現実を大きく変えてしまう場合もあります。《アンガー・フロム・ザ・ボトム》や《スター・アンガー》は瀬戸内国際芸術祭会期中だけの仮設展示だったのが、人々を巻き込み、愛されることで、常設展示となって町のシンボルになっています。それはヤノベ作品が持つ物語性が、多くの人に波及している証拠ではないでしょうか。

 

「シネマタイズ」される美術館

美術館の展示においても、予定調和的な「美術館の日常」を変えるものが多くあります。例えば、「あいちトリエンナーレ2013」では、教会の作品《太陽の教会》を制作し、実際の結婚式が開催されまた。

 

さらに、2010年の発電所美術館(富山)では、水力発電所跡の美術館という特徴を利用して、巨大な水瓶を作り、9トンもの水を放水しています。あるいは、豊田市美術館では、巨大ロボット《ジャイアント・トらやん》が火を噴いたり、人工雷発生装置テスラコイルを使った作品《黒い太陽》を制作し、放電を行っています。たいていの美術館では禁止されるようなことを行ってきています。

 

今回開催される「CINEMATAIZE シネマタイズ」展では、一室全体に巨大プールやトンネル、廻廊が設営され、ヤノベ作品と組み合わせた巨大インスタレーションが設置されます。それが同時に映画スタジオとなります。そこでは、会期中に林海象監督、永瀬正敏主演の映画『BOLT』が公開撮影される予定です。

 

「CINEMATAIZE シネマタイズ」展は、第一部では、過去の作品とドキュメンタリー映像によって、ヤノベ作品が現実を「シネマタイズ」してきた歴史を追う「Cinematized Reality」、第二部では、映画美術となったヤノベ作品でSF映画を撮影する林海象永瀬正敏とのコラボレーション展示「Cinematized Fiction」が展示されます。そこでは、ヤノベ作品との出会いによって、ヤノベの物語(創作ヒストリー)を発見すると同時に、観客が自身の物語を生み出す要素と、ヤノベ作品が映画美術となってその世界観が映画化されるという要素が重層的に存在しています。

 

第一部では、デビュー作《タンキング・マシーン》から始まり、《アトムスーツ》や《トらやん》などの代表作が勢ぞろいし、毎度制作される映画的な演出の予告映像やドキュメンタリー映像などによって、ヤノベ作品によって「シネマタイズ」された現実が明らかになります。第二部では、撮影セットと混然一体となったヤノベ作品が、今までとは違った虚構的空間を展開されます。しかし、それらは時に交錯し、現実が虚構に、虚構が現実に相互干渉しながら、新たな物語を紡いでいくでしょう。

 


ヤノベケンジ「シネマタイズ」展 特報1

 

参考文献

 

ヤノベケンジ ULTRA

ヤノベケンジ ULTRA

 

 

新装版 ヤノベケンジ作品集 YANOBE KENJI 1969-2005

新装版 ヤノベケンジ作品集 YANOBE KENJI 1969-2005